くだり酒とくだらない酒‥の巻

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前項で『くだらない』という言葉は『酒』と『空気』が関係してると書きましたが、それは江戸時代、上方で生産され、江戸へ運ばれ消費された酒、特に灘(現在の兵庫)の酒がもてはやされていたことから話は始まります。

当時の都は京都ですから、物事は京を中心に考えますので、関西から関東へ渡ることは今と逆で『下り』と言われていました。この灘の酒も関西から下って来た酒、『下り酒』と呼ばれていたそうです。その灘の下り酒、味が絶品!まろやかで口当たりが良く、樽香もして、当時、それはそれは美味しい酒だったそうです。江戸付近でも酒を作っていましたがもう比べ物にならないほど、それほど重宝されてたんですね。

で、この灘の酒、なんでそんなにまろやかで口当たりが良く香りが良いのか。。別に特別な製法で作っていたわけではないんです。前項で書いたこと。。『お酒は空気に触れることでまろやかで香りがよくなる。』そう、灘から江戸への輸送手段は船による海上輸送。道中、波で揺れますよね。運ばれる酒も踊り踊って空気と交わります。ついでに樽の香りも酒に馴染んで江戸につく頃にはそれはそれは美味しい酒に生まれ変わっていたのです。空気と酒はそれほど密接で重要な繋がりがあるわけですね。でも、当時はそんなこと知る由もないですから、粋のいい江戸っ子は、わざわざ灘まで行って・・・

「江戸に下る前の出来立ての本場の灘の酒を呑んでみようじゃねぇか!」

ってことになるんてすね。どの時代でもそういう方いらっしゃいます。

遠路はるばる灘まで足を運び、江戸に下る前の酒を・・・

「さぞかしうめーんだろうなぁ!へへ!」

『グビっ』『ん⁇、んん⁇』

どこか口当たりも・・香りも・・・

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と・・・・

期待が大きかっただけになおさらガッカリして江戸に戻ったそうです。
もちろんこの人、酒と空気の関係を知りません・・
まさか、江戸まで運ばれる道中で酒がうまくなるなんて・・

以降、このような人をさしたか、酒をさしたか定かではありませんが、
おおよそ面白くない体を「くだらない」と言ってるそうです。

このように、お酒は空気にふれることで酸化をはじめ味や香りが変化していきます。そのことを知っているのと知らないのではワインや日本酒を味わう時の引き出しがまるで変わってくるんです。・・・知っておいて損は無いですよ♪( ´∀`)

 

※追記
その筋の方からご指摘を頂きましたので追記します。確かに空気は酒をまろやかにし香りを立たせる魔法のような存在なのですが、これは酸化の途中の行程でして、呑む直前にこのような空気と融合させるのがベストです。普段から「おいしくなぁれぇぇぇ〜♡」と瓶を振っても酸化が進んで「酢」になるだけですので勘違いなさらぬよう・・・(現に江戸で栄えた「くだり酒」は足が速かったそうです。) と・・ここまで注意事項。ワインや酒を保存する時はできるだけ適度な温度、湿度の中で静かに眠らせるように保存するのが一番。

あと・・まさかとは思いますが、シャンパンを振っても中身が無くなるだけですのでやめておいたほうがいいでしょう(笑